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建設業の技能実習生の人数枠とは?要件などもあわせて解説

1993年に創設された技能実習制度ですが、建設業での受け入れは今後ますます増えていくと予想されます。しかし、建設業の実習生はほかの業種に比べて失踪などのトラブルが多いという課題もあります。

 

そこで、失踪の抑制と技能実習の基準を強化するために、新たな基準が設けられました。新たな基準の1つに、建設分野における受け入れ人数枠の変更があります。

 

建設業で技能実習生の受け入れを検討している企業の中には、

 

「新基準での受け入れ人数は?」

「要件は?」

 

と疑問をお持ちの方も多いでしょう。

 

この記事では、建設業における技能実習生の人数枠と要件について詳しく解説します。

ぜひ、最後までお読みください。

建設業の技能実習制度とは

ここでは、建設業の技能実習制度について見ていきましょう。

技能実習制度の概要

技能実習制度は、外国人が日本の技術・技能・知識などを修得し、学んだ技能を活かして母国の発展に貢献してもらうことを目的としています。

 

1993年に創設された制度で、2009年には入管法が改正され「技能実習」の在留資格ができました。2017年に技能実習法が施行され、実習生の保護や適正な実習のための仕組みが強化されました。

 

2023年3月31日時点で、以下の87職種・159作業が対象となっています。

●1. 農業関係(2職種・6作業)

●2. 漁業関係(2職種・10作業)

●3. 建設関係(22職種・33作業)

●4. 食品製造関係(11職種・18作業)

●5. 繊維・衣服関係(13職種・22作業)

●6. 機械・金属関係(15職種・29作業)

●7. その他(20職種・37作業)

●8. 社内検定型の職種・作業(2職種・4作業)

この制度は、外国人の母国(開発途上地域など)の経済発展を担う人材を育成するのが目的のため、単なる人材不足の対策としての利用はできません。しかし、人手不足の解消のために外国人を受け入れている側面もあるのが現状です。

 

実際、近年の建設業界では外国人労働者の受け入れが進んでいます。

国土交通省のデータによると、2022年10月末時点で建設業に就いている外国人116,789人のうち、70,489人が技能実習生でした。建設業で働く外国人のうち、技能実習生が約60%を占める計算です。

技能実習生の受け入れ方法

技能実習生を受け入れるには、以下の2つの方法があります。

 

●1. 企業単独型

日本の企業(実習実施者)が海外の現地法人や関連会社から職員を受け入れて、技能実習をおこなう方法です。

 

●2. 団体監理型

事業協同組合や商工会などの営利を目的としない団体(監理団体)が実習生を受け入れて、傘下の企業(実習実施者)で技能実習をおこなう方法です。

 

ほとんどのケースで、団体監理型の方法が利用されています。全体の98.6%(2021年末時点)が、団体監理型です。

 

ただし、監理団体になるには、一定の要件を満たしていなければなりません。要件については次項で後述するので、合わせて確認してください。

技能実習の在留資格と期間

企業単独型か団体監理型かで、在留資格の種類は異なります。

 

企業単独型の在留資格

団体監理型の在留資格

1年目

「技能実習第1号イ」

「技能実習第1号ロ」

2〜3年目

「技能実習第2号イ」

「技能実習第1号ロ」

4〜5年目

「技能実習第3号イ」

「技能実習第1号ロ」

 

技能実習の区分は1号〜3号まであり、1号→2号→3号とステップアップできます。3号まで進んだ場合、最大5年間の就労が可能です。

 

入国してから1年目は「技能を修得」する段階として、1号に分類されます。

2〜3年目には「技能を習熟」するステップへと進み、2号に分類されます。1号から2号へ進むには、学科・実技試験の合格が条件です。

4〜5年目では「技能の熟達」を目指すステージで、3号に分類されます。2号から3号へ進むには、実技試験の合格が条件です。

 

2号・3号へ進める職種・作業は、主務省令で定められています。具体的には、送出国のニーズがあり、公的な技能評価制度が整備されている職種です。加えて、3号へ進めるのは、優良認定を受けた企業のみです。

建設業の技能実習生の要件

ここでは、要件について見ていきましょう。

実習生側の要件

●1. 修得しようとする技能が単純作業でない

●2. 18歳以上で、帰国後に日本で修得した技能を要する仕事に就く予定がある

●3. 母国で修得することが困難な技術である

●4. 送出国の公的機関から推薦を受けている

●5. 日本で実習予定の業務と同じような仕事に外国でも就いたキャリアがある

●6. 技能実習に参加する特別な理由がある(団体監理型のケース)

実習実施者側の要件

実習実施者とは、実習生を受け入れる企業を指します。

実習実施者(受入企業)の要件

以下は、全産業で共通している要件です。

 

●1. 欠格事由に当てはまらない

関係法令(技能実習法など)に違反し処罰を受けた・暴力団員であるなどに当てはまらないのが条件です。

 

●2. 技能実習責任者・技能実習指導員・生活指導員を配置する

  • ● 技能実習責任者:実習生に関わる職員の監督や実習の進捗状況を管理します。過去3年以内に養成講習を受講していなければいけません。
  • ● 技能実習指導員:実習生に業務を教え、技能修得の指導をします。指導員になれるのは、当該業務で5年以上の実務経験がある常勤の職員です。
  • ● 生活指導員:実習生の日本での生活を指導・サポートします。指導員になれるのは、実習をおこなう事業所の常勤の職員です。

 

●3. 実習生の住まいを用意する

住居の広さは、1人あたりパーソナルスペースが4.5㎡以上でなければいけません。住まいだけではなく、生活必需品なども準備してください。例えば、家具・家電・Wi-Fiなどです。

 

●4. 日本人と同等以上の給料を設定する

不当に安い賃金で働かせるのは、法令違反です。違反すると、受け入れが一定期間できなくなるため注意してください。

 

●5. 社会保険に加入させる

日本人と同様に、健康保険・労災保険などの社会保険への加入が義務付けられています。

 

●6. 帳簿を作成・保管する

実習日誌や実習計画の履行状況に係る管理簿などを作り、実習終了後も1年間は保管しなければなりません。

 

●7. 監理団体に加入する(団体監理型のケース)

 

技能実習計画の認定基準

受入企業は、実習生ごとにプランを作成し、許可を得なければいけません。

技能実習計画は、以下の基準で判定されます。

 

●1. 実習生の母国において修得が困難な技能である

 

●2. 技能実習の目標

  • ● 1号:技能検定基礎級・検定と同レベルの技能実習評価試験の実技と学科の合格
  • ● 2号:技能検定3級・検定と同レベルの技能実習評価試験の実技の合格
  • ● 3号:技能検定2級・検定と同レベルの技能実習評価試験の実技の合格

 

●3. 技能実習の内容

  • ● 単純作業でない
  • ● 第2号・第3号は移行対象職種である
  • ● 技能実習をおこなう事業所で通常できる作業である
  • ● 移行対象職種・作業は、業務時間の全体の半分以上を必須業務・半分以下を関連業務・3分の1以下を周辺業務とする
  • ● 実習生に、実習予定の業務と同じような仕事に外国でも就いたキャリアがある、または実習に参加する特別な理由がある
  • ● 帰国後に修得した技能を活かす仕事に就く予定がある
  • ● 第3号実習生は、第2号終了後に1カ月以上、第3号開始後1年以内に1カ月以上1年未満帰国している
  • ● 実習生や家族が、保証金や違約金を課されていない
  • ● 第1号実習生向けに、日本語や出入国・労働関係法令などの科目による入国後講習がある
  • ● 複数職種のケースでは、いずれも2号の移行対象職種である・相互に関連性がある・同時にする合理性がある

 

●4. 実習する期間

第1号は1年以内、第2号・第3号は2年以内です。

 

●5. 前ステップでの技能実習で決めたゴールが達成されている

第2号なら第1号のときの、第3号なら第2号のときに設定した目標です。

 

●6. 技能の適正な評価の実施

技能検定や技能実習評価試験などによる評価を行わなければいけません。

 

●7. 適切な体制・事業所の設備・責任者の認定

  • ● 事業所ごとに技能実習責任者・技能実習指導員・生活指導員を配置してい
  • ● 過去5年以内に人権侵害行為や偽造・変造された文書を使用していない
  • ● 技能の修得に必要な機械・器具・そのほかの設備を備えている

 

●8. 許可を受けている監理団体による実習監理を受ける(団体監理型のケース)

 

●9. 日本人と同等の報酬、実習生に対する適切な待遇の確保

  • ● 日本人と同等以上の給料である
  • ● 適切な宿泊施設の確保・入国後講習に集中できる準備がある
  • ● 食費・家賃などを問わず実習生が定期的に支払う費用について、適正な金額で合意が得られている

 

●10. 優良要件への適合(第3号をおこなうケース)

以下項目の満点(150点)の6割以上を獲得しなければいけません。

  • ● 技能の修得に係る実績(70点)
  • ● 技能実習を行わせる体制(10点)
  • ● 実習生の待遇(10点)
  • ● 法令違反・問題の発生状況(5点)※違反などがあると大幅減点
  • ● 相談・支援体制(45点)
  • ● 地域社会との共生(10点)

 

●11. 実習生の受け入れ人数の上限を超えない

詳しくは後述します。

 

建設業特有の要件

技能実習における建設分野では、失踪者数が分野別で最多となっており、問題視されていました。失踪の要因としては、報酬の変動や就労場所が変わることによる管理の難しさなどが挙げられます。

 

対策として、以下の3つの基準が追加されました。

 

●1. 体制の基準(令和2年1月1日から適用)

  • ● 受入企業が建設業第3条の許可を受けている
  • ● 受入企業が建設キャリアアップシステムに登録している
  • ● 実習生を建設キャリアアップシステムに登録する

 

建設キャリアアップシステムとは、技能者に対する評価や待遇を改善し、キャリアパスの見える化を目的に考えられたシステムです。

建設業界では、技能者の高齢化・若手入職者の減少・定着率の低さなどが問題視されていました。慢性的な人手不足の要因として、建設業におけるキャリアパスの見えづらさがあります。

建設キャリアアップシステムの導入によって、技能者の処遇改善・建設業の魅力アップ・人材不足の解消・失踪者の減少などが期待されています。

 

●2. 待遇の基準(令和2年1月1日から適用)

  • ● 実習生に対し報酬を安定的に支払う

 

報酬形態を月給制にしなければいけません。

日給制や時給制では、季節や工事の受注状況によって仕事の繁閑があり、想定していた報酬を下回るケースもあります。こうした報酬の不安定さが、就労意欲の低下や失踪につながる可能性は否定できません。

月給制であれば、仕事の繁閑にかかわらず毎月安定的に一定額の報酬が手に入ります。

 

●3. 実習生の人数(令和4年4月1日から適用)

  • ● 実習生の数が常勤職員の総数を超えない

 

人数については、次項で詳しく解説します。

受け入れをおこなう監理団体の要件

●1. 営利を目的としない法人である

商工会議所・中小企業団体・職業訓練法人・農業協同組合・漁業協同組合・公益社団法人・公益財団法人など

 

●2. 監理団体の業務の実施基準に沿って事業を適正に行える能力がある

  • ● 実習実施者に対して定期監査(3カ月に1回以上)
  • ● 第1号実習生に対して入国後講習の実施
  • ● 技能実習計画の作成指導
  • ● 実習生からの相談対応

 

●3. 監理事業を健全に遂行できる財産の基礎がある

 

●4. 個人情報の適正な管理のために必要な措置を講じている

 

●5. 外部役員または外部監査を設置している

 

●6. 基準を満たす外国の送出機関と、実習生の取次ぎに係る契約を結んでいる

 

●7. 優良要件への適合(第3号をおこなうケース)

以下項目の満点(150点)の6割以上を獲得しなければいけません。

  • ● 実習の実施状況の監査・そのほかの業務をおこなう体制(50点)
  • ● 技能の修得に係る実績(40点)
  • ● 法令違反・問題の発生状況(5点)※違反などがあると大幅減点
  • ● 相談・支援体制(45点)
  • ● 地域社会との共生(10点)

 

●8. 上記1〜7のほか、監理事業を適正に行える能力がある

以下を満たしていなければいけません。

  • ● 適正な種類の監理費を、前もって用途および金額を示した上で割り当てる
  • ● 自己の名義をもって他人に監理事業を行わせてはならない
  • ● 事業所ごとに適切な監理責任者が配置されている

建設業の技能実習生の受入れ人数枠

2022年(令和4年)4月1日より、実習生の受け入れ人数の枠に制限が設けられました。

 

新基準では、技能実習生の総数が常勤職員の総数を超えてはいけません。新基準以前に、実習生の総数が常勤職員の総数を超えているケースでも、2022年4月1日には新基準を満たすように調整しなければいけません。

人数枠

ここでは、受け入れ人数枠について見ていきましょう。

団体監理型

下記の表を参考にしてください。

常勤職員の総数

第1号技能実習生の数

301人以上

常勤職員の総数の20分の1

201人〜300人

15人

101人〜200人

10人

51人〜100人

6人

41人〜50人

5人

31人〜40人

4人

30人以下

3人

 

上記の表、第1号の人数が基本人数枠です。

 

第2号では、基本人数枠の2倍の人数が受け入れできます。

 

例えば、第1号技能実習で常勤職員が3名・実習生が2名のケースで考えてみましょう。

常勤職員の総数3名を超えない範囲なので、実習生はあと1名(3人目)の受け入れが可能です。

 

優良な監理団体・受入企業は、新基準が免除されます。

  • ● 第1号:基本人数枠の2倍

常勤職員総数が上限です。

 

  • ● 第2号:基本人数枠の4倍

常勤職員総数の2倍を超えるときは、常勤職員総数の2倍が上限です。

 

  • ● 第3号:基本人数枠の6倍

常勤職員総数の3倍を超えるときは、常勤職員総数の3倍が上限です。

企業単独型

下記の表を参考にしてください。

 

企業の種類

第1号

第2号

出入国在留管理庁または厚生労働大臣が認める企業

基本人数枠

基本人数枠の2倍

上記以外の企業

常勤職員総数の20分の1

常勤職員総数の10分の1

 

優良に当てはまるケースは、以下のとおりです。

企業の種類

第1号

第2号

第3号

出入国在留管理庁または厚生労働大臣が認める企業

基本人数枠の2倍

基本人数枠の4倍

基本人数枠の6倍

上記以外の企業

常勤職員総数の

10分の1

常勤職員総数の

5分の1

常勤職員総数の

10分の3

常勤職員の定義

常勤職員とは、社会保険の被保険者を指します。被保険者になるには、適用事業所から労務の対象として給料を受け、使用される者として認めてもらうのが条件です。

 

常勤職員の数には、外国にある事業所に所属する常勤職員・技能実習生・外国人建設就労者・第1号特定技能外国人は含みません。

 

法人の締役や理事は、使用される者ではなく使用者に該当します。原則として雇用保険の被保険者とならないため、常勤職員の人数には含まれません。

しかし、取締役などであっても会社の部長・支店長・工場長などを兼務しているケースは、労働者としての側面が強いため、雇用関係があると認められれば被保険者となる可能性もあります。

まとめ

この記事では、建設業での技能実習生の要件と、新基準の人数枠について解説しました。

 

建設業における技能実習制度の利用は増加しており、注目されている制度の1つです。しかし、建設業特有の要因から、失踪者が多いなどの問題点もあります。

対策として、建設キャリアアップシステムの義務化や給与体系の見直し、受け入れ人数枠の制限などの新基準が設けられました。

 

建設業における技能実習生は、今後も増えると予想されます。新たに受け入れを考えている企業の方は、本記事で解説した新基準を参考にしてください。

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