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「失踪」を回避するためにはどうすればよいかの考察
現在、様々な国からの技能実習生が増えています。厚生労働省の調査によると、2018年末の技能実習生の数は、なんと約27万人。しかし残念ながら、技能実習生の中には失踪してしまう人も一定数いるのです。
このページでは、以下の3点にフォーカスしながら日本の技能実習制度の現実をお伝えしていきます。
1. 失踪者数の推移
2. 失踪の原因
3. 失踪者を減らすために考えるべきこと
少しでも参考になれば幸いです。
1. 失踪者数の推移
はじめに、外国人実習生の失踪者数の推移を見ていきましょう。
下記のグラフをご覧ください。
中国人実習生を除き、全体的に失踪者数が増えていますね。
では、具体的な数字もチェックしておきましょう。
ベトナム | 中国 | カンボジア | ミャンマー | インドネシア | その他 | |
---|---|---|---|---|---|---|
平成24年 | 496 | 1,177 | ― | 7 | 124 | 201 |
平成25年 | 828 | 2,313 | ― | 7 | 114 | 304 |
平成26年 | 1,022 | 3,065 | ― | 107 | 276 | 377 |
平成27年 | 1,705 | 3,116 | 58 | 336 | 252 | 336 |
平成28年 | 2,025 | 1,987 | 284 | 216 | 200 | 346 |
平成29年 | 3,751 | 1,594 | 656 | 446 | 242 | 400 |
※カンボジアは平成27年から集計しており、平成24年から平成26年は「その他」に含まれています。
そして、すべて合わせた失踪者の総数と技能実習生数に占める割合は下記のとおりとなっています。
失踪者数 | 技能実習生数 | 全体に占める割合 | |
---|---|---|---|
平成24年 | 2,005 | 151,482 | 1.3% |
平成25年 | 3,566 | 155,214 | 2.3% |
平成26年 | 4,847 | 167,641 | 2.9% |
平成27年 | 5,803 | 192,655 | 3.0% |
平成28年 | 5,058 | 228,589 | 2.2% |
平成29年 | 7,089 | 251,721 | 2.8% |
平成24年と比較すると、2倍以上も失踪者の割合が増えています。
実習生が100人いるとしたら、そのうちの3人くらいが何らかの理由で失踪してしまうということですね…。
では、なぜ“日本で働きたい!”と思った実習生が「失踪」という道を選んでしまうのでしょうか?
2.失踪の原因
法務省の調査によると、失踪の主な原因は下記のとおりとなっています。
● 低賃金
● 労働時間が長い
● 暴力を受けた
● 帰国を強制された
● 指導が厳しい
ではここで、厚生労働省が発表した送検の事例をご紹介していきたいと思います。
【事例1】
1,200万円を超える賃金の不払い及び1ヵ月最長120時間程度の違法な時間外労働を行わせたことにより送検。
(内容)
● 技能実習生5名に対し、約2年間にわたって「国民年金積立」などの虚偽の名目で違法に控除した。
● 時間外・休日労働に対して時間単価で500円程度しか支払われていなかった。
【事例2】
虚偽の帳簿書類の提出や臨検妨害などを繰り返した事業主らを逮捕した上で、賃金不払等により送検。
(内容)
● 事業主と監理団体の代表者が、虚偽の記載をした帳簿書類を提出していた。
● 技能実習生4名の賃金が月額6万円しか支払われていなかった。
● 時間外・休日労働に対して時間単価で400円程度しか支払われていなかった。
【事例3】
賃金の不払及び違法な時間外労働について送検。
(内容)
● 技能実習生6名に対し、8ヵ月間「帰国の際にまとめて支払えば文句ないだろう」との理由で賃金を全く支払わず、不払いとなっている賃金が総額約1,100万円あった。
● 時間外労働・休日労働の合計が最長の者で月約240時間・月平均約170時間あった。
“本当にこんなことが日本で起こっているの?”と信じられない気持ちになりますが、実際に起こっている問題です。また、ここでは書類送検された事例だけご紹介していますが、これらは氷山の一角で、水面下ではまだまだ深刻な問題が起こっています。
さて、これらの事例でも共通しているのは「低賃金」そして「長時間労働」だということ。正社員と同じように働いているにも関わらず、月収10万円以下というのはザラにあります。
また、「事例3」の場合は月平均の残業時間が170時間です。1ヵ月30日で計算すると、1日5.6時間残業していることになるのです。一般的な労働時間は9時~18時ですが、この実習生の場合は9時~24時で働いているということです。さらに、最長で働いている実習生は月240時間の残業です。つまり、1日8時間の残業+土日どちらも返上ということ。いかに劣悪な労働環境だということが分かりますね。
ここまで読んで、“じゃあ職場を変えればいいじゃないか!”と思う方もいるかもしれません。しかし、現在の日本の技能実習制度では、技能実習生の自己都合で職場を変更することができないのです。
例えるならば、「毎日残業・土日返上・最低賃金以下」の超ブラック企業であっても、“あなたが選んだんだから、転職するのは禁止。ずっとこの会社のために働いてね”と言われるようなものです。正直、失踪するのも納得でしょう。
では、これ以上失踪者を増やさないためには、どうしたらいいのでしょうか?
3.失踪者を減らすために考えるべきこと
まず見直すべきは、「技能実習制度」という制度でしょう。もともと「国際協力」という名目の元でできた制度ですが、今や外国人労働者を安く買い叩くだけの制度と揶揄されることも多い制度となってしまいました。
そして、こうなってしまう原因は“実習生に選択肢がないこと”だと考えています。選択肢がないと、以下のような悪循環になってしまう可能性が高いということです。
しかし、実習生に“職場を変更できる”という選択肢があれば、下記のグラフのように悪循環も良循環に変わる可能性が出てくるのではないでしょうか?
余談ですが、韓国の実習制度では「3回まで」という制限はあるものの、自己都合で職場を変更することができます。そして現在、“韓国で働きたい!”という外国人実習生が増えています。
まとめ
いかがでしたでしょうか?今回は、日本の技能実習制度の現状を取り上げていきました。
一見改善されているように見える技能実習制度ですが、実は失踪者が増えているのです。
ご存知のとおり、日本は超高齢化社会です。これからどんどん外国人の労働力が必要になるにも関わらずこのような劣悪な労働環境で働かせるということは、世界中に“日本は低賃金×長時間労働が当たり前ですよ!”と宣伝しているようなものです。まさに、自分で自分の首を絞めているのです。
スケールの大きい話かもしれませんが、まずは“実習生が選択肢を持てる制度にする”、そして受け入れる側は、“最低賃金以下×長時間労働”で買い叩くのではなく、いつ失踪してもおかしくないと考えて、実習生が働きやすい環境を整えるべきではないでしょうか。
とはいえ、現行の制度では実習生は転職の自由がありません。
受け入れ企業の労働基準法遵守と、監理団体による適正な監理体制が望まれます。
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